食用の魚を育てるときに使う餌

市場で流通している魚の多くは養殖されたものになりました。世の中でのニーズに応えられるほどの漁獲を天然から望むのは難しくなっている現状があるからです。養殖技術が発達したことによってかなりの種類が養殖可能になり、その生産量も着実に増える傾向があります。しかし、しばしば天然と養殖では味が違うということが言われるように全く同じ食材になるわけではありません。その影響を与える因子として運動量が制限されていることや環境があまり変化しないこと、細菌などの外敵に対する応答が必要ないこと、共生菌が異なってしまうことなどがよく注目されています。それに加えて影響があるとされているのが餌の違いです。

魚は天然にいるときにはプランクトンや小魚を主に食べて生きているものが多く、食べるものが一つに限られることはありません。食べたものによって体が作り出されていき、成長しているのは明らかでしょう。食べたものの違いによって体の組成が変わるのも当然であり、筋肉の量や脂ののり方の違いを代表として食味に大きな差異をもたらしてしまう可能性が十分にあります。天然の場合には育ってきた環境によって食べ物が大きく異なるため、品質が安定しにくいという問題を食用の場合には考えなければなりません。これに対して養殖の場合には一定して同じ餌を与え続けるのが基本になっています。これによってどの個体もほぼ均一に育つようになり、品質を一定に保って出荷できるというメリットが生まれているのです。

養殖魚の餌としてもともとは生魚の切り身がよく用いられてきました。大量に取れる魚の中から商品価値が低い傷物などを選んでそのまま与えるという方法が一般的でしたが、現在ではほとんど使用されなくなっています。もっと簡便に与えられる餌の方が養殖現場として便利であると共に、さらに餌の成分を安定させて魚の品質も均一にすることができると考えられるからです。近年よく用いられているのはモイストペレットとドライペレットであり、どちらも原料は魚です。ドライペレットは魚を乾燥させて粉にしたフィッシュミールを成形したものであるのに対し、モイストペレットはフィッシュミール以外に切り身の粉砕や魚油を使用しています。初期に登場したモイストペレットは現在でも最も広く用いられていますが、徐々にドライペレットに着目するケースも増えてきました。ドライペレットは保存性が高く、成形が容易で餌として重宝されるようになっているのです。また、成分が溶けだしてしまいにくいことから水を汚すリスクが低い点でもドライペレットが着目されています。このようなペレット状にすることで栄養の添加を行うことも可能であり、不足しやすいビタミンCもよく添加されています。また、切り身と違って小さくするのが容易なので確実に餌として食べてもらえることからコストパフォーマンスも高いのが魅力です。

業務用の魚を仕入れるときには安定した品質を求めるなら養殖ものを選んだ方が賢明です。大量に購入するときほど養殖の方がコスト的にもメリットが大きいのが魅力になります。天然ものにこだわりたいという場合には天然ものを業務用で扱っているかを調べてみると良いでしょう。卸業者を広く扱っているインターネットサイトを利用すると高い網羅性を持って欲しい天然魚を探すことが可能です。安定して供給してもらうのが難しいのが天然ものですが、全国各地の卸業者からの情報が見つけられるサイトを使うと比較的入荷を安定させやすくなります。それでもだめなときには養殖ものにするという判断もしやすいでしょう。片方しか扱っていない卸業者と提携してしまうよりも柔軟性の高い仕入れの方法です。

なお、飲食店の中にはいけすを持っていて新鮮な魚をさばいて提供する高級店もあります。このような場合には餌をどうするのかが話題になりがちですが、通常はいけすの中にいる魚は餌を食べていません。養殖ものを出荷するときにも同様のことが行われていますが、絶食の状態にしておかないと消化管の中に内容物が入ってしまって味を損ねる原因になってしまうからです。特に丸ごと食べる場合には内臓を取り出したとしても周囲の味わいに変化をもたらすことがあるため、餌を与えないでいけすに入れておくというのが基本になっています。そのままではやせ細って味落ちを起こしてしまうため、常に生きた魚を入荷して入れ替えていくことが必要になります。美味しいものを目の前でさばいてもらえる飲食店を探したいというときには、しっかりと魚が頻繁に入れ替わっていることを確認するのが大切です。飲食店を経営する側としてもいけすを用意したら頻繁な入れ替えを心がけないと鮮度が低下するだけでなく、お客からの信用を失ってしまうことになりかねません。